犬の心の病気について


犬も人と同じように心の病にかかることがあります。犬の祖先は狼という説が有力ですが、狼同様に犬も群れのリーダーを中心に縦割り組織で構成されます。そこでの掟はただ一つ、上位の者に従うという事だけです。愛犬と一つ屋根の下で暮らしていくうえで、人が上、犬が下という関係はとても重要です。犬にはコンプレックスという感情はありませんので、群れの中で順位が最下位になったとしても不満を持たず、かえって多くの上位の者に守られ、安心、安定した毎日が送れるのです。しかし、守ってくれるはずの上位の者が不在になると急に不安になって問題行動を起こしてしまう犬もいます。リーダーや上位の者への依存心が強い傾向にある犬が多く示す行動です。

アメリカの研究機関では、犬の問題行動のうち20~40%が分離不安障害が原因だといわれています。


分離不安症

飼い主から離れると途端に不安になり、問題行動や異常行動を

起こすことを言います。

 

留守番の間中、長時間にわたってずっと吠え続けたり、寂しさを紛らわす為にイタズラとは言えない程の破壊行動をしてしまったりします。飼い主への依存心が高い犬に見られる傾向があります。

1日中、愛犬と供に居られるような時間を作ることができない場合が

多く、対処が難しいとは思いますが、不安の原因が飼い主の不在であることが判っていれば、ある程度の対策が取れます。

スマホなどで簡単操作ができるお留守番用カメラを活用することで、電話を通じて飼い主の声を聞かせてあげられるので愛犬の不安緩和に役立つ可能性がありますので、試してみる価値はあると思います。

犬にも飼い主にも難しい問題です。

飼い主にとっては問題解決までに長期的なしつけや訓練を必要とする場合がありますので、忍耐を必要とし、愛犬の症状の改善を待ってあげなくてはなりません。

愛犬は飼い主と一緒にいたいと思い、気を引くために大きな声で吠えたり、クッションを噛んだり破ったりします。分離不安障害は、愛犬が独りの時に極度のストレスを感じる状態で起こります。

飼い主が飼い切れないと思い、悲しいことに犬を捨てたり、処分したりする理由にも直結してしまう深刻な問題でもあります。

アメリカでは毎年処分される犬猫数百万頭のうち、およそ半数が何らかの問題行動を原因とした飼育放棄などの理由で処分されています。

もしかすると、問題行動の中には単なるしつけの問題だけではない原因が隠れているかもしれません。症状がひどくなる前に一度、動物行動治療を専門とする獣医師に相談しましょう。


強迫神経症

飼育環境の変化や飼い主や家族、同居犬との関係といった

長期的なストレスが原因で症状としてあらわれます。

 

原因については未だはっきりとはしません。

症状としては、足や爪を皮膚炎になるまで舐め続けたり、自分の尻尾を追いかけまわしてグルグルと回ったり、自分の体を傷つけてしまったりします。同じものを噛み続けたり、執拗に反復行動がみられる場合などに該当します。

 

こうした異常行動の要因には葛藤状態や社会的・環境的はく奪などが起因します。ゾウやブタ、ホッキョクグマなどにも見られます。

 

   ある特定犬種に出やすい強迫性行動という症状

例としてドーベルマンが自分の脇腹を吸い続ける「脇吸い」、ゴールデンレトリバーやラブラドールレトリバーが自分の体を皮膚炎になるほど舐め続けたり、ジャーマンシェパードが自分の尻尾を執拗に追い続けたりといった例が知られています。

原因が多岐にわたる為、決定的な解決策があるわけではありません

犬を取り巻く環境の中で原因になっていると思われるものを取り除いていくしかありません。同居犬や飼い主の態度が原因のときは、愛犬との接し方を根本から見直しましょう。

 


パニック症候群

外部からの強い突然の刺激によりパニック状態になって

制止やコントロールが効かなくなる病気です。

 

雷・花火・激しい雨・工事の音・救急車のサイレンの音などの大きい音や突然の動きに遭遇するなどを起因とする病気で、概ね臆病で神経質なタイプの犬に見受けられます。

症状としては、おもらしや嘔吐、震え、暗い所に隠れるなどのパニック症状がでます。

 

母犬や兄弟犬との触れ合いに大切な、すりこみ期の不足による精神的な未熟さや何らかの経験がもとで、トラウマになっていることが起因します。

 

 

治療対処にあたって

病状が重症の場合は、獣医師によって精神安定剤を処方することもありますが、ほとんどが行動治療です。

  • パニック症状を起こしたら、横を向いて無視する。
  • 光や音が入ってこないように寝床の位置や防音対策を講じる。
  • パニックを引き起こす音を録音して、はじめは小さな音から聞かせて慣らせていくなどがあります。

すりこみ期不足を起因とする問題行動 (生後56日以内の犬猫の販売禁止の訳)

子犬は可愛らしいですが、生後一定の期間は親兄弟犬と一緒に過ごさないと、精神的な未熟さなどが原因で、吠え癖や噛み癖などが強まったり、

攻撃的になったりといった問題行動を起こす可能性が高まるので、一緒にしておかなければなりません。

親犬や兄弟犬と遊びながら、あいさつの仕方やボディランゲージ、じゃれるときの力加減など、さまざまな犬社会のルールを学ぶ大切な時期です。

人間からは十分に教えることができませんし、一人で学ぶこともできませんので、子犬の時期に親兄弟犬とたっぷりと遊ぶことはとても大切なことです。

生後2ヶ月半~4か月くらいまでの子犬を対象としたパピークラスを集めた子犬同士の遊び交流会を催している所もありますので、「ほかの犬に慣らす場」として最適ですね。


攻撃行動

激しい威嚇や攻撃行動がみられる病気です

遺伝的要素や性格が原因の場合やほかの病気やケガが原因による症状の可能性があります。

「テリトリー(縄張り)を守る」「恐怖心」「支配性」の大きく3つの精神的要因に分けられます

 

自分のテリトリーに犬や知らない人が侵入すると、激しく威嚇したり、攻撃したりしますが、テリトリーを守ろうとする意識の強さは、犬種や性格により異なります。

子犬のころに様々な環境や音に接する機会が少なく、社会化が十分にできていないと恐怖心からパニック症状が出て、その場から逃れることを目的とした破壊行動をする場合があります。

 

家族への攻撃は飼い主の家族よりも犬の方が上位順位だと勘違いするところから始まります。(アルファシンドローム:権勢症候群)犬も仲間の群れの中で自分の順位確認のために常々、ボディランゲージで確認をして安心を得ています。上位者がとるボディランゲージに下位者が取るべきボディランゲージをとらない場合、お互いが譲らずトラブルになります。

しかし、犬側で社会化が未熟で、犬の社会的言語であるボディランゲージを取れず、相手側にトライ(挑戦)する行動であると受け取られることがありますが、子犬の時から犬は常々最下位であることを認識させておけば、順位が覆ることはなくなります。犬は順位に対するコンプレックスを持ちませんので、人が上、犬は下という順位を徹底させることは犬にとってもストレスではありません。犬は社会構造をしっかりと構成するので、一度確定した順位は、ほぼ変動しません。しつけの初期の段階での服従訓練(オビディエンス)は、愛犬を家族の一員として一緒に暮らしていくうえで一番大切なことです。

また、犬にも自分の場所(パーソナルスペース)があった方が精神的にも落ち着いて生活することができます。快適で安心できるテリトリーとして愛犬の居場所を確保してあげることも対処策になります。